2016年11月26日(土)~11月27日(日)
テアトロコント vol.13 渋谷コントセンター月例公演(2016.11)
主催公演
公演詳細
しっかり雰囲気(フリ)を作ってそれを落としていく(ボケ)サンプルが印象的。“最高”が“最悪”に。“ダンディな男”が“バイトリーダー”に。
今回特に印象的だったのはサンプルであった。演目は『友達』。序盤で最小限の小道具とBGMで高級感あるバーを表現し、そこでビシっとしたスーツを着て一人飲む古屋氏。この『テアトロコント』という場において、高級感あるバーにてダンディな男が一人酒を飲む。そのミスマッチさ、または古屋氏があまりにダンディ過ぎたため、もう客席からクスクス笑いが漏れている状態であった。
終演後のアフタートークにて、サンプルは「芸人さんのようなフリとボケで笑いを作る事が自分達には出来ないから、それを取っ払った所で作っていった」という趣旨の話をしていた。
個人的には、この演目は最初にしっかり雰囲気を作り、大学の先輩・後輩が15年ぶりに再会する場面ではお互いに最高の気分を出している事こそがフリではないかと思う。
“フリボケ”の言い方が違うとすれば、“表裏”と言っても良いか。「カッコ良さ」のすぐ後ろには「カッコ悪さ」が付いて回り、「最高な気分」のすぐ後ろには「最悪な気分」が付いて回るといった具合に。
「高級感あるバーにてビシっとスーツを着たダンディでカッコいい男」が、中盤になって職業が「ドトールのバイトリーダー」だという事が分かるカッコ悪さ。出会った瞬間は「ここ2、3年で一番幸せです」と言っていたのが終盤で取っ組み合いの喧嘩手前になってしまう最悪の雰囲気。
話としては最初でしっかり山の頂上まで登らせ、それをどう転落させていくか。笑いの部分では、一貫して底流には良い所で飲んでいる馬鹿な2人をクスクス笑う土壌があって、時たま繰り出される悪口パンチラインに爆笑する。会話劇というだけには少し勿体無い。歴としたコントであった。そしてそれを日常会話だけでやってのけた。“フリボケ”はコントだけでなく日常にも潜んでいるのかもしれない。(倉岡慎吾)