2016年4月16日(土)~4月17日(日)
テアトロコント vol.6 渋谷コントセンター月例公演(2016.4)
主催公演
公演詳細
〜君、しゃぶることなかれ〜 より下世話なのが、きっと僕らの“舞台”なのだ!『テアトロコントvol.6(4月16日部)』
テアトロコントvol.6。ホロッコ・ほり太の“もっとお笑いも振りきれていいかもしれない”という言葉が飛び出した。テアトロコントが演劇シーンの成熟に一役買っているのだと感じた。
ホロッコ。10年以上前から上演している『となりの小津さん』ネタ。こまり扮する“小津さん”が、ほり太演じる“19歳の僕”と繰り広げるホームコメディ。コントより演劇に近いネタだと感じる。本人たちが語るところでは、お笑いファンが詰めかける劇場で小津さんネタを下ろしても、ポカーンとされてしまうとか。演劇の客層とお笑いの客層の性質が違うことを明確に表しているのだと思う。小ボケのネタが人を選ぶので、もう少し吟味したほうがいいと思う。
ナカゴー。もはやテアトロコントの顔となりつつあるナカゴー。ナカゴーの舞台にはお馴染みのキャラクター、市長が登場し、高齢になって使い物にならなくなったイチモツをもう1度勃起させたいという。30分間のなかで、フェラチオが2回も登場。おいおい、AVでもこんなに咥えねえぞ!鎌田順也いわく“フェラ演劇”。間違いなく奇抜さが抜きん出ていた。
劇団2組目サンプル。エチュードから生まれた『謝罪』は、破廉恥な不祥事を起こす芸能人に対するアンチテーゼ。SNSを利用して115人と不倫した役者がさまざまなことに謝罪する。簡単なつくりだが、役者と台本の力が最も出やすい。後半は空気がダレて、ちょっと退屈になってしまう。
トリは13年キングオブコント優勝のかもめんたる。コントを主戦場としてきた彼ら。かもめんたるのコントは設定が秀逸。『アオダイショウ』では槙尾がヘビを使って営業をする新入社員を、『草野球の誘い』では体が入れ替わった元プロ野球選手を岩崎が演じる。それぞれのキャラクターに適したツッコミが入る。(早川さとし)
稀有な話題
1番目はホロッコ。『となりの小津さん』は前回ユーロライブの単独公演でやっていたネタと基本的にはいっしょだったのだけど、この『となりの小津さん』シリーズに関しては切り口の鋭い新ネタが常に求められているというより、いつもの小津さんを今日も観て、ほっこり出来ればそれでいいという観客も多いのではないだろうか。もちろん、ほっこりした。
2番目はナカゴー。『レジェンド・オブ・チェアー』はその椅子に座ると男は勃起、連れ添っている女はその男の欲望に応えるべく…というもはやナカゴーのなかでシリーズと化している、子供にはあまりみせたくないタイプのネタ。余談だけれど、アフタートークに出てきたナカゴーの出演者に「あんなひとでてたっけ」と最初首を傾げたのは何も私だけではないだろう。独特の笑顔がキュートな(?)おじさん、役作りとかいうレベルじゃなく本人とマジで別人ですね!
3番目はサンプル。『謝罪』はどらま館で初演が行われた『テスト・サンプル』で披露した作品。しかし、大胆にオチを変えていた。コントを観に来たお客さんが多いと思われる公演で、あえて笑いの少ない方向へオチを切り替えたことに驚いたが、他者の愚かさを笑って済ませることの出来た前回より、半強制的に自分の愚かさを突きつけられる今回のほうが個人的には好み。性的なことについての総叩きをメディアで目にするたびに、叩いている者のうちいったい何人が本当に清廉潔白なのだろうと鼻白んでいた者にとっては、胸のすく展開。
4番目はかもめんたる。いろいろ語弊がある言い方だけれど、テレビで観るより数倍面白いように思えた。『アオダイショウ』も『草野球の誘い』も、ちょっとありえないバックボーンを持つ変人が、変さを過剰にアピールすることもなく、どちらかというと素朴に、過去のいきさつを詳細に語りだす。嫌なくすくす笑いを絶えずしてしまうような、じんわりとした悪意に客席が次第に呑まれていく感動は、わざわざ足を運ぶ価値のあるものだった。
今回のテアトロコントはアフタートークも良かった。楽屋裏の人間関係にはあまり興味が持てない自分にとって、お笑いと演劇のネタの作り方や心づもりの違いなどについて緩やかに掘り下げていった、司会のかもめんたるの功績は大きい。アフタートークの完成度についてはバラつきが激しいように見受けられるので、そろそろ何らかの方針が欲しい気もする。テアトロコントという稀有な試みの中でしかできない、稀有な話題もきっとたくさんあるはずなのだから。(綾門優季)