渋谷コントセンター

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2019年6月28日(金)~6月29日(土)

テアトロコント vol.37 渋谷コントセンター月例公演(2019.6)

主催公演

公演詳細

テアトロコントvol.37(6/28)の演目
【トンツカタン】『ハンカチ』と『改札前』は、スマートフォンを題材にした街の二景といった感じのコント。前者では、SNSの普及とともに広く浸透したエゴサーチとそれにまつわる人々の心理が描かれ、後者は、街中で出会った見ず知らずの人と思いがけず行動が同調してしまう様子が描かれていた。『相方』『クズ男』『気づいて』は、表面からはうかがい知ることのできない複雑な関係性や事情を抱えた男女のカップルと、彼らに遭遇してしまった他者の戸惑いとが描かれていた。菅原さんと櫻田さんは活舌があまり良くないのだが、お笑いの人だとそれが個性となり、プラスの要素として働くところが面白いと思った。
【ピンク・リバティ】『私の眼』。夜の繁華街で、これから男とラブホテルに行こうとしている酒に酔った女が、サングラスをかけた怪しげな女に声をかけられ、おだてられているうちに、サングラスの女とその仲間の女2人に取り囲まれて両目の眼球を奪われる、といったストーリー。特に理由もなく、相手に興味があるわけでもないのに、見るからに怪しげな赤の他人と延々と会話を続ける主人公の心理が理解できず、話に入り込めなかった。また「目がダイヤモンド」という表現が出てくるが、目がダイヤモンドのようにきれい、なのか、目がダイヤモンドという石そのもの、なのか、聞いていて判然としない。最初は前者の意味で受けとっていたのだが、話が進むにつれ、後者の意味で言っているように聞こえてきて、余計な疑問が頭にわいてしまい、自分はここでもつまづいた。3人の女が主人公を一歩一歩追いつめ、その両目を奪おうとするあたりの緊迫したやりとりや怪しげな雰囲気はとてもよかった。
【紺野ぶるま】『引っ越し』は、喫茶店のような場所で交わされている女同士の会話を切り取ったコント。冒頭で不動産会社との電話のやりとりがあり、その流れで、女性を不動産物件になぞらえてランク付けするような会話が始まる。似たようなフレーズを繰り返して展開をあるていど予感させながら、観客を狙った落ちに確実にみちびいていくので、笑いどころがわかりやすい。バツイチは「リノベーション」、タレントの熊切あさ美は「いいマンションだけどオートロックじゃない」などの独特の表現も楽しい。マイケル富岡の名前は、30年近く前に野沢直子が響きの面白さメインで歌ネタに取り入れていたと記憶するが、笑いを予感させる名前としていまも有効であることを知り、その息の長さに驚いた。女優になれるとおだてられて上京してみたものの夢破れた女が現在の心境を友人に吐露する『女優の夢』と、自分が輝ける場所を発見した女が、そこに至るまでの紆余曲折をインタビュー形式で語る『駅員』は、前後編のような印象があった。ここでも「勘違いしてる人を食い物にする人たちに引っぱりだこ」「AKBにいそう、というのはもはや悪口」といった風刺のきいたせりふが楽しい。『落語家の娘』と『駅員』は、BGMの音が少しうるさかった気がする。
【フロム・ニューヨーク】『アリバイ』は、銀行強盗のぬれぎぬを着せられた男が、友人2人と喫茶店で落ち合い、2人の知恵を借りてアリバイを立証しようとする、といったストーリー。冒頭、友人の1人は少し遅れてやってきて、男の話に何食わぬ顔で耳を傾けるのだが、彼が犯人かもしれないと警察に伝えたのは、他でもないこの友人だったことがすぐに明らかになる。なぜそんなことを言ったのかと問われると、友人は、たまたま銀行強盗の顔を目撃していて、なんか顔が似てたからさ、などと平然と答える。この時点ですでにいろいろおかしいのだが、他の2人はしつこくつっこむこともなく、新しい話題が持ち出されると、3人そろってすぐそちらに意識が向いてしまう。万事こうした調子で会話が進んでいく。観ているこちらは、銀行強盗という言葉にとらわれているせいか、トイレの便座の位置が高すぎるとか、用を足した後の手を洗う順序が変とかいった副次的なついでの話題にむきになって反論したり、聞かれてもいないのに唐突に性的願望を開陳したりするときの、直情的で短絡的な反応に笑いつつも、そんなこと言ってる場合じゃないだろ、とつい思ってしまうのだが、そう思ってしまうことがすでに作者の思う壺であるような気がして、物語にすっかりからめとられていることに気づく(※せりふはうろ覚えです)。(大熊)


色メガネを外した先に広がる世界
皆さんは大阪人にどんなイメージをお持ちでしょうか?うるさい、がめつい、派手好き、馴れ馴れしい、しゃしゃり出る、ボケたがる、ガラが悪い…。そうそう!と首を縦に振ったアナタ、今すぐその考えを改めてください。何故なら、それは大阪人の全員に当てはまることではないからです。
大阪には内気で気弱なオバちゃんもいる。その確固たる事実を表現し、観客に気づきを与えてくれたのが、奇才・岡野陽一さんです。大阪のオバちゃんと言えば、傍若無人で厚かましい。もしかしたら、そんなイメージを持っている人が多いのかもしれませんが、それは単なる偏見で、その偏見が内気で気弱なオバちゃんたちを生きづらくしているのです。
まだポカ~ンとしている人は、自分に置き換えてみれば、よく分かります。巷で言われている県民性と自分の性格は違う、職業柄持たれるイメージと実際は全然違う、血液型で性格を決められるのは心外だ、そう思っている人は決して少数派ではないはずです。そうした型にはめた見方が世界を狭くし、差別を助長しているのです。大阪人は明るく振る舞うよう、脳にチップが埋め込まれている。と、岡野さんはSF的表現をしていましたが、もしかしたら、大阪人とはこういう生き物だという勝手なバイアスを生み出す装置が、私たち一人一人の脳に埋め込まれているのかもしれません。
ところで皆さん、栃木にはどんなイメージをお持ちでしょうか?やはり、ギョーザのイメージが強いのでしょうか?では、栃木からギョーザを取ると、どうなるでしょう?岡野さんは断言しました。それはもう岐阜です、と。ギョーザのイメージを保ち続けるためにも、栃木の人はギョーザの消費量を上げるのに一生懸命。だから、毎日、無理やり食わされてると。大阪とは打って変わって、偏見がドイヒーなコントがここでは展開されました。勿論、これはパラドックス。偏見の恐ろしさを、馬鹿馬鹿しさと滑稽さをもって描いてみせたのです。
偏見を笑い飛ばすことで偏見をなくす。これは、差別が蔓延する現代社会において必要な行為。コント師が果たすべき、大きな使命と言ってよいでしょう。岡野さんはその役割を果たすことができる、有能なコント師であることは間違いありません。ただ一つ、気掛かりなのは、自らのギャンブル好きを作中にも取り入れ、うだつの上がらない、怪しげなオジサンというキャラクターを強く打ち出している点。これはこれで腹がよじれるほど面白く、強烈なキャラ付けに成功しているのですが、一方で、拒否反応という偏見を生んでしまう可能性も。自らが課した枷をいかにして乗り越えるのか、それもコント師の腕の見せ所です。(市川幸宏)


梅雨のテアトロコントの、安定の楽しさと、けだるさ。
《1》【トンツカタン】<コント師>三人組/演目:『ハンカチ』他、計五作品/★★★☆☆/
男二人の前に、女がハンカチを落としては男に拾ってもらうを繰り返し、ツイッターと連動して告白してくる『ハンカチ』、改札前で泣き続けるカップルのせいで電話の声が聞こえない『改札前』など、全パターンがカップル的な男女にツッコミを入れる男の構造。話が繋がっているわけでもないのに、同じ構造で飽きずに見れたのが逆にすごい。コント師はアスリートのように笑いを瞬発的に取って得点を重ねるイメージだが、舞台の温度が急上昇するわけでもなく、一定の温度で進みながらも、妙に見れてしまう不思議な心地よさがあった。別の構造コントが見れる日も楽しみ。
《2》【ピンク・リバティ】<演劇人>出演者:五人/演目:『私の眼』一作品/★★☆☆☆/
公園のベンチに腰掛け、電話で席を外した男を待っている一人の女。そこに別の女がやってきて「ダイヤのようにキレイな眼」に驚き、”眼”の撮影会に。眼のわずかな気泡に気づくと、真のダイヤか確認するため、眼をくりぬいてしまう。結果ただのビー玉だったことに落胆し、非難して去っていく‥。内容はコントと呼べるほどの笑いは感じず、かといってそこまで怖くもない「世にも奇妙な物語」的な不条理劇だが、冒頭のカラオケから抜け出しホテルに向かおうとする男女の、けだるくエロティックな空気、夏の湿度、質感表現は得意技なのが伝わってきた。何よりも本公演間近で別作品を用意するほとばしる創作意欲に敬意。
《3》【紺野ぶるま】<コント師>一人/演目:『駅員』他、計四作品/★★★★☆/
「右よーし!左よーし!出発進行〜!ピーッ!(笛)」銀河鉄道999の曲が鳴り響く中、勢いよく合図を送る女性駅員が
雑誌取材に答える。「知ってるんです、この時の私、五割増だって」。「テレビを見て西川女医が”美人すぎる女医”って言われてるの見て、これだ!って思ったんです。ハードルを下げる作業、してこなかったなって」。二つ目のコント『女優の夢』で、夢破れ恨み辛みを抱えたままの女が、最後のコント『駅員』で「私の人生は各駅停車でいいんです。ゆっくり景色、見えますから。右よーし!左よーし!出発進行〜!ピーッ!(笛)」と、笑顔で幸せを語って終わる構成に普通に感動。初めて長尺コントを拝見したが、テンポよく饒舌に喋る姿にまず驚き、謎掛けや、R1での闘いでは気づけない輝きがあった。曲終わりとコント終わりを合わせる嗜好も、個人的には好みだ。フェイク・ドキュメンタリー『人間の証』(フジテレビ系)を見ていても感じたが、女性のプライド、上昇志向への怨念(同族嫌悪)が詰まっていて、今後ホラーにまで発展してしまわないかという心配と期待がある。
《4》【フロム・ニューヨーク】<演劇人>三人組/演目:『アリバイ』一作品/★★★☆☆/
「実際はね、なんとなく似ただけの別人だったけど、ついそっくりって言っちゃったんだよな。」銀行強盗の犯人に顔が似てるという目撃証言から、犯行時刻のアリバイを証明するため友人二人に相談するが、その目撃者は、目の前の友人だったことが発覚し‥。ちょっとした会話のズレが、気が狂いそうなくらい永遠と続く会話劇。ビックリするくらい後味が残らなく、思い出すのも難しいのだがが、その場では楽しく、自然体のまま、明らかにズレ続けていく様が恐ろしい。
【総評】アフタートークでいとうせいこうさんが全部もっていた感があるが、”ブクブク”と呼ばれる声帯訓練が気になった。梅雨のテアトロコントは、けだるくも安定の楽しさ。今回も多くの学びを頂いたことに感謝。(モリタユウイチ)


何人いるか 何人に見えるか
トンツカタン『ハンカチ』渋谷ハチ公前、ハンカチを拾う男。そこに現れる持ち主らしき女性。ハンカチを擬似餌として男をジャンジャン釣っていく。あげくハンカチを直に渡していく。そしてキャッチ&リリース、落とすハンカチの数と熱量の法則。『改札前』女を泣かす男。と思ってたら男も泣く。フェスのノイズ並みに泣く。泣くのが仕事かの様に。ベイビーのスタイル。その様子を見ていた男はベイビーノイズに電話の会話を遮られていた。しかしふと気付く。電話を切るとノイズが止む事に。なぜ?頭を擡げるジャーナリスト精神。その時、男は泣いている理由を語り出す「好きすぎて」…男はカップルに示したジャーナリスト精神を持て余すしかなかった。『相方』ヨシ子ちゃんに告白成功!でも彼女のことを相方とか言ってるからこりゃヤベーやつだなと思ってたらホントの天下取りの野望を持つお笑いコンビだった。でもヨシ子ちゃんは正直そんなに達者じゃない。そして実は彼のことが好きなんだ。だから速攻でカップルに軌道修正。『クズ男』自称役者の彼。残念なのかと思わせて借りた金は3倍返し、服はおじいちゃんの形見、次の大河に出演予定。
そして彼女の方が万引き常習。おふたりに幸あれ!『気づいて』イチャつくカップル・タッくんとヨシ子。ヨシ子は女装、タッくんはメガネを外したら別人のヨコヤマ。それを見ていた森本。気付いたヨシ子は「私が見えるの?」と、まさかのシャマラン展開に!今回は5本のネタの途中から登場しなくなったのだが、何かが起こると森本のもとに掛かってくる電話の相手は誰なのだろう。そんな舞台に立っていない人物の存在が気になった。
ピンク・リバティ『私の眼』夏の日。女は「パルコどこですか?」とスズキと名乗る女性から尋ねられる。更に「いい目ねー。いつから目がダイヤなの?残しとかなくちゃ」と強引に写真を撮ろうとするスズキ。そこにスズキの〝知人の市民〟妊婦のヤマモト・パコ顔のタカギが現れ本物のダイヤか目を外させろと迫る。そして、その取り出された目をビー玉だと糾弾する3人。失われた視界で「私の目を返して!」と懇願する女。「それしかないの!」戻って来たタカギがビー玉を返し女は生還する。現れた人物達はどこか女の一部なのだろうと感じたが、まだキャラクターを削ることが出来るのではないかと思った。
紺野ぶるま『引っ越し』ちーちゃんは以前マイケル富岡と付き合っていた。それは何年経とうが間に誰が入ろうが事故物件は事故物件。バツイチはリノベ、ちーちゃんはデザイナーズっていうよりコーポ。普通。場所で言ったら二子新地。ラモス瑠偉、セイン・カミュ、パパイヤ鈴木。あーラモスのアタックの強さよ。『女優の夢』完全に崖っぷち、競馬・パチンコは墓場。野菜ソムリエはすっとこどっこい資格。どうしてくれる!那須高原テレビ!『落語家の娘』春風亭昇太のまんじゅうこわいを見て父ちゃんの噺がパクられたと騒ぐ娘。昇太のチュパ(息継ぎ)ウザいと軽く毒吐きつつ寿限無も含め古典の存在を知らされる娘。May J.のカバー例えで納得した様子。エッ?じゃあ著作権は?マージンは?父ちゃんを愛して止まない娘であった。『駅員』可愛すぎると言われたい女駅員。仕事中は制服で5割増。アレ!?この人さっきの那須高原の人だ!ニッチ狙いで茨城・水戸に辿り着く。この流れで一気にTV出演「出発進行―!!」テレビでは下衆なイメージの強い紺野さんだが今回は1人でたくさんの人間を出現させてみせた。個人名をジャンジャン出しちゃう所や構成も大変好みだった。1つ気になったのはアフタートークでMCのいとうせいこうさんも言及されていたがオチのフェードアウト感。ボンヤリした空気になり締めの笑いが分散してしまっている様に感じた。もしカットアウトしていればドンッとしたオチの気持ち良さを得られたのではないだろうか。
フロム・ニューヨーク『アリバイ』強盗の容疑がかかるゴトウ。1時間以内にアリバイを証明しなければ警察に逮捕されてしまうという。やはりフロム・ニューヨークは素晴らしかった。何が素晴らしいかってゴトウがバイト先でしてるのがステーキのズレを直す業務。最高だ。この3人でしか成し得ない唯一無二の世界。大竹まこと氏のいないシティボーイズというか、順当にいけば市川さんがそのポジションなのだろうが、そうはならない。ズボンのポケットに忍ばせていたタオルをゆっくり引き出すからだ。こうなるともうナンセンスの渦は回転を止めない。その回転に気持ち良く巻き込まれるのみだ。
今回はいろいろな登場人物達に出会えました。また今度、円山町で逢いましょう。(イトモロ)

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