渋谷コントセンター

文字サイズ

2020年7月25日(土)~7月26日(日)

テアトロコント vol.45 渋谷コントセンター月例公演(2020.7)

主催公演

公演詳細

テアトロコントvol.45(7/26)の演目
【テニスコート】『滝』は、友人同士3人で秘境の滝を訪れる場面から始まる。滝へ行くことを提案した1人は本物の滝を目の前にして感動に打ち震えるが、残りの2人はそれほどでもなく、時間をもてあます。ついなかったことにされがちな、〝がっかり〟とか〝期待はずれ〟とかいった言葉で表現される感情を俎上にのせて、それらが生まれやすい状況や構造を描いていた。「滝だね」「滝って感じですよね」「滝なんですよ」という、滝を目の前にした3人の微妙な温度差が伝わるやりとりや、「どんじゃなくてすん」、「コーヒーは面白くない」という〝いま〟が感じられるせりふなど、いつもながら言葉が丁寧だと思った。作者が意識しているかどうかはわからないが、ここ最近都心の商業施設、とりわけオリンピックに合わせて開業や改装を行ってきた施設を訪れるたびに、なんともいえないがっかりした空気が漂っているように感じられていたところだったので、タイムリーなネタだと思った。『ポーカー』は、海外ドラマの吹き替え声優のようなしゃべり方をする3人の男女がポーカーをしているところへ、4人目の男があらわれ、3人が属する世界の虚構性をおびやかし、破壊していくといった話。感情表現がもともとオーバーな吹き替え調のせりふまわしを、日常に近いシチュエーションにとりいれることで、オーバーさをさらに強調している。この吹き替え調のせりふまわしがみなうますぎて、その過剰さにまず笑ってしまうが、そもそもなぜそんなしゃべり方をするのかといった点は保留にされたまま話はどんどん進み、いきなり始まるバトル、全員でものを叩くシークエンス、ラストで突然叫ぶ「だしがでるでる」までナンセンスをたたみかけていき、過剰さをさらにあおる。やたらと表情豊かな吉田正幸、吹き替え調がとりわけはまっていた小出圭祐、飄々としてどこまで本気なのかわからない山口ともこ、笑っているだけですでにおかしい神谷圭介のいる舞台は、多幸感に満ちていて、みていてただただ楽しかった。
【スーパーニュウニュウ】『黒猫』は、女の子が道端で黒い子猫をみつけ、ひろって帰ろうとするも、親猫があらわれて威嚇されるといった話。外見も動きも無骨な子猫(の人形)がとてもかわいらしかった。『パワースポット』は、男女のカップルがとあるパワースポットを訪れるが、その直後から女には次々と幸運が舞いこみ、一方の男には立て続けに不幸がおきるといった話。前半のべたべたな展開の印象が強すぎて、落ちを忘れてしまうほどだった。『駐車場』は、スーパーの駐車場で男が車にのって母親の帰りを待っていると、スモークガラス越しに見知らぬ女に因縁をつけられるといった話。しょっぱなからずっと満面の笑みを浮かべ、どことなく不穏な空気を醸し出していたふるやいなやが、ここへきてそれまでとは別方向に感情を爆発させていて、本領発揮といった感じでとてもよかった。
【劇団アンパサンド】最初の演目は、「合唱か踊りか」で対立する2人の子どもと、対立の仲立ちをする先生、1人の子どもの背中に亀の甲羅がついていることを発見して驚くもう1人の子ども、という4人が板付きで登場し、「対立」と「驚き」のシークエンスが同時並行で描かれる。説明を排したシュールな世界観と、小道具とりわけ糸電話の使い方が面白かったが、一番笑ったのは、終演後にこの演目のタイトルが『過疎の学校』であると知ったときだ。3人で行う多数決や妖怪っぽい身体的特徴の種明かしがそこでされているように思われた。本編でそのことに一切触れなかったセンスが自分はとても好きだ。『言うまでもない』は、声優になるという夢を追うために今日で会社を辞める非正規社員の女性が、職場の同僚らに別れの挨拶をする場面を描く。休憩時間に持参した材料でクリームソーダを作る女性や、消費することに飽きたのでタピオカジュースのお店をやりたいと話す女性など、キャラクターそれぞれの個性が際立っている。1人また1人と舞台に人が登場するたびに、それまでそこで交わされていた会話をひっくりかえす情報がもたらされ、会話をしていた者同士の間に気まずい空気が流れる構造が巧みだった。(※せりふはすべてうろ覚えです) (大熊)

心にとめておきたい、情熱の温度差
仲良しの友達に誘われたんでしょう。「凄いから!絶対、感動するから!」と言われたんでしょう。「本当に?」と思いつつ、そこまで言うならと乗っかったんでしょう。てくてく、てくてく2時間半、歩きなれない山道を登り続けたんでしょう。そして、へとへとになった頃、驚きの光景が目の前にパーッと広がったんでしょう。そこで思わず出た言葉が「滝、だね」。戸惑いがちな神谷圭介さんと吉田正幸さん。一応「いいね」と言いつつも、もしかしてと思い、小出圭祐さんに尋ねます。「この後の流れって…?」。言わずもがなですが、滝だから「流れ」です。どうやら、この先にもっと大きい滝があるとか、隠れ家的なレストランがあるとかではないようです。時間はたっぷりあるから、存分に滝を満喫してもらいたいと言う小出さん。神谷さんが確認します。「これがゴール?マックス?」。「あんまりだったってことですか?」と問い詰める小出さんに「コース料理みたいにこの後メインが控えてるなら調整したいと思って」と強引に取り繕おうとする神谷さんですが、曇りがちな瞳から滲み出る、がっかり感は隠しきれません。
空気を変えようと思ったのか、吉田さんが持ってきたコーヒーを2人に勧めます。何でも、パプアニューギニア産の豆を使った面白いコーヒーだとか。カップを手にする神谷さんと小出さん。注いでもらおうとするものの、説明が長く、何度も出したカップを引っ込めます。で、飲んでみると、普通に美味しい。意外性がないか尋ねる吉田さんに神谷さんがプチ切れ。「コーヒーに面白いなんてないんだよ」。
そして、神谷さん、藪から棒に「空気悪くなったからクイズやろう」と言い出したかと思うと、押すと丸い札が上がって「ピコーン」と鳴る、例の早押しのやつを取り出します。さらに、あろうことか、こうして『高校生クイズ』の決勝みたいにやると「画的には弱い滝も効果的に見えてくる」と本音がポロリ。小出さんの悲しげな顔といったらありません。
この3人、普段、何気ない会話をしてる時はめちゃめちゃ仲いいんじゃないでしょうか。ところが、話を自分の得意分野に持っていくと、よろしくない。何故って、滝への、コーヒーへの、クイズへの愛が溢れ出ちゃって止まらないから。あなたの周りにも、そんな人いませんか?いないって人は、あなた自身がその可能性大です。人の振り見て我が振り直せ。人付き合いの術をそこはかとなく教えてくれるテニスコートのコントって「凄いから!絶対、笑うから!」と友達を強く誘いたくなります。(市川幸宏)

Aマッソと吉住さんを同時に楽しめる貴重さ!
《1》【Aマッソ】<コント師>2人組/演目:『親子』他、計2作品/★★★☆☆/
 算数好きの娘に、外出嫌いの母親が、全部で20ポイントしかない”保護者カロリー”を、学校年間行事に配分させ、できるだけ出席を逃れようとする『親子』。一瞬ブラックすぎるような気もしたが、嬉しそうにカロリー配分を説明するお母さんの笑顔を見ていると、面倒な事は面倒と正直に言える母親と娘の関係も、これはこれで素直でいいのでは、という気もしてくる。子供との信頼関係によるんだろう、などと真面目に考えた。加納さんが普段より女性っぽく感じたのは、役柄のせいか、メイクのせいか、または何か別の兆候だろうか。
《2》【吉住】<コント師>出演者:1人/演目:『子役』他、計4作品/★★★☆☆/
 全員子役のクラスを受け持った担任が、どうにか普通の子供と同じように育てようとする『子役』。今回も単独公演からの抜粋のようだが、吉住さん定番の”歌一曲まるごと使ったお芝居コーナー”は、女の子が性教育の授業で真実を知り家出する女の子に、鬼塚ちひろを流しきって楽しそうに演じていた。吉住さんの演技は、どれも悲しみを全力で演じている様が楽しそうで輝いている。
《3》【劇団アンパサンド】<演劇人>出演者:4人/演目:『過疎の学校』他、計2作品/★★★☆☆/
 学校の文化祭で合唱か、ダンスか揉めている中、一人の女生徒の背中にカメの甲羅らしきものがあることを気づいた生徒が先生に事情を話すと、秘密を知ったからには、彼女が自由に踊れないダンスには投票しないよう求められる『過疎の学校』。二作品ともに、”選択肢を選ぶときに生まれる痛みのようなもの”が共通項に感じた。人は周りとの関係性の中で物事を決めてしまいがちだし、逆にコツコツと進めているつもりでも、周りにあっという間に追い抜かされたら、その努力は対外的にはなんの価値も産まない。初見だが、複雑でなかなか言語化しづらいゾワゾワとした痛みを舞台化しようとする挑戦心を感じた。
【総評】最前列のフェイスガードにマスク、人数調整された観客。演じる方からしたらやりづらさマックスの環境で、華麗に笑わせてみせた出演者と、実行してみせた運営者に最大限の拍手を。世界的災難も、どうにかこうにか乗り越えようとするテアトロコントに、ガッツを感じた。Aマッソと吉住さんを同時に楽しめるのは貴重だと思う。次回がどうなろうとも楽しみにしています。今回も大きな学びを頂き感謝!(モリタユウイチ)

TOP