渋谷コントセンター

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2015年10月24日(土)

テアトロコント vol.2 渋谷コントセンター月例公演(2015.10)

主催公演

公演詳細

まるでカルチャーのごった煮! エンターテイメントの闇鍋を召し上がれ!『テアトロ・コントvol.2』
 10月24日に興行された、『テアトロ・コントvol.2』。旗揚げ公演となった前回に引き続き、芸人2組と劇団2組の20分ごとのオムニバス劇だ。前回と変わらないのは、その毒々しさ。いや、今回はさらに上をいく“猛毒”なのかもしれない。そんな猛毒でさえ跳ね返すような、悪玉菌だらけの観客が渋谷ユーロスペースに集まった。
 マッハスピード豪速球といえば、オフィス北野に所属し確実に実力を伸ばしているコンビだ。長尺でやったことがないというが、誰もが知っているような都市伝説を元にしたネタで、コントよりも漫才のようなやり取りが多く、台詞に力が感じられなかったが、わかりやすい設定で良かった。
 続いて、東葛スポーツ。舞台が始まった瞬間「?」となった。東葛スポーツの公式サイトに、“これまで影響を受けてきた様々なプロップスをサンプラーに取り込み、ヒップホップ流の了見でアウトプットする”とある通り、過去に放送されたテレビ番組をコラージュのように継ぎ接ぎして、展開。演者の台詞におよその意味があるとは思えない。最後は、主宰の金山自ら舞台にあがって、リリックを披露。これは……演劇なのか!?いや、きっと演劇であるに違いない。人を選ぶ作品で、隣の座っていた女子高生たちは、終始沈黙していたゾ!
 玉田企画は、舞台の稽古を舞台上でするという斬新な設定が素晴らしい。コントというテーマに寄せた内容で、わかりやすいフリとボケが会場を湧かせていた。稽古では、作中の演出家役を演出家自身がやるので、役者が大混乱するため演出家として意見を言う時は、手を挙げて話したというのが面白い。これほどの完成度を今回のために書き下ろしたというだから、玉田真也恐るべしである。売れない劇団の稽古ということで、演劇に関わった人でないと分からない部分があったが、来月のユニット『弱い人たち』での玉田作品も期待だ。
 トリは、マツモトクラブ。R-1でその名前を知らしめたマツモトクラブ。彼の十八番である音源を用いたネタで、会場を掴んだ。マツモト演じる主人公と親友と、嘘を見抜ける親友の飼い犬。3幕に分けた構成で、2幕では、伏線のために笑いが殆どないところが劇団出身のマツモトらしい。構成として1幕でネタのルールを見せておく、という手法が用いられているので、後半の展開が読めてしまうのが惜しかった。が、その実力は折り紙つき。一番会場を湧かせていたことは間違いない。(早川さとし)

コント師による演劇へのアプローチ
 一番手はマッハスピード豪速球。演目は『都市伝説』。斧を持った男がベッドの下に入り、女性を驚かせる都市伝説が存在し、女にフラれた男(ガン太)がその女の自宅に忍びベッドの下に入ろうとした所、その都市伝説を生み出し、現在もそれを実行している男(坂巻)が先に入っていて鉢合わせるコント。「この家はベッドの高さが低すぎず、高すぎず最高で、そこそこの美人だから驚かし甲斐がある」や「この伝説をする上で大事な持ち物はカロリーメイト、タオルケット、携帯ゲーム、オムツ」などの都市伝説をいざ行う際の幻滅するような現実的な話や、「俺がこの伝説を生み出した。即ちレジェント。」「『都市伝説』の『伝説』って個人に使う言葉じゃないと思うんですけど…。」などの痴話喧嘩など、「都市伝説」という大きい括りに対して細々とした所をちょっとずつ突いていく所が笑いの軸となっていた。
 二番手は東葛スポーツ。演目は『声』。佐々木幸子の「山口百恵ラストコンサート」、「ジャン・コクトー『声』」、「らくごのご」、「戦後70年談話」映像マッシュアップ演劇からの古関昇悟のケーシー高峰実演という構成。未だにこの演劇をどう昇華すれば良いのか分かっていないのだが、振り返ってみるとその毒っ気に驚かされる。佐々木幸子演じる女優は三谷幸喜と電話をしている模様で(後から調べたが、ジャン・コクトーの『声』という演劇が日本公演で三谷幸喜演出による鈴木京香の一人芝居で、女が電話で語りをするものらしい。)、「何故、鈴木京香を起用するんだ!」と怒っている。「鈴木京香の持つスペシャル感か!」と言い、NHK震災復興支援ソングの映像で一切歌っていないが出ているだけでスペシャル感を漂わす鈴木京香が流れたり(ここで「ノムさんは歌ってるのに!」と野村克也の歌う映像が流れるというとばっちりが起きる)、「戦後70年談話」を「らくごのご」の「お題落語」に見立て、安倍首相がキーワードを使ったらそこに斜線が引かれ、「お題落語」の映像に切り替わり鶴瓶やざこばが即興落語の中でお題の言葉が使われたシーンが流れるしくみであったりと、思い返すと毒に満ちていた。最後のラップパートでは、旭化成建材、シールズ、山口組、大勝軒、今いくよ・くるよなど2015年を網羅するようなラップで閉めた。その後ケーシー高峰ゾーンだが、約10分間ずっとケーシー高峰2015の上演だった。ケーシー高峰を観た、という感想だった。
 三番手は玉田企画。演目は『変心』。男女5人の役者と1人の演出家のによる演劇で、セリフや展開が滅茶苦茶な演劇の稽古風景で、役者が台詞回しや展開がおかしいのではと主張すると、演出家が難癖をつけて微妙な空気になり稽古が進んでいく様が描かれている。先に滅茶苦茶と書いたが、実は言うほど滅茶苦茶でもなく、確かにもしかしたら演出家の通り動いたら演劇が良くなりそうかも、みたいな場面もあったり、また確かに後半は白塗りの男が無意味に出てくる滅茶苦茶さはあるが、それがこの演出家の世界観であるというのもほんの少しの一理があったりと、勿論役者と演出家の立場の関係も込みではあるが、そこに漂う微妙な空気感で初めから終わりまでずっと可笑しかった。そしてこの痛い演出家の要素は自分にも少しあると考えると笑えるが少し痛む気持ちでもあった。役者たちがもっと稽古をしようと団結し始めると急に演出家の携帯が鳴りバイトに行こうとする様に青年団らしさを感じた。またアフタートークで、マッハスピード豪速球のお二人が「メタのメタ」、「ああいう空気感をなかなか共有できないから演じられて羨ましい」と言っていたのは、それこそガン太氏が「いやらしく笑いに擦り寄ったものがお笑い」と定義したものと反対のやり方の「お笑い」だと思ったので、今回の組の中で一番演劇とコントのボーダーに居たのではないかと思う。
 四番手はマツモトクラブ。演目は『タロウは意外とよく吠える』。マツモト演じるナベちゃんが近所の幼馴染で犬のタロウを散歩させてるイケチンポと喋る場面、家でイケチンポの死を知らされる場面、葬式で弔辞を読む場面と大きく分けて3つある。ナベちゃんが嘘をつくと犬のタロウが吠える1幕目はツッコミのタロウ、戸惑うイケチンポを全部音声で演じるマツモトクラブのネタに魅了された。劇団が2組続くとフリ→ボケ→ツッコミ→リアクションの流れがとても見やすい。前回もそうだったが、劇団とコント師の順番はこれがベストかと思う。2幕目がイケチンポの魂がナベちゃんの部屋の様子を見ている場面だが、まぁ大きく間を取った演技で、ストーリーの構成上なのかボケ数も少なく、ちょっと実験的に思えた。3幕目がこれまた弔辞を読むボケ方なので、数も多く笑いやすかったので、見やすいコントだったと思う。
 全体を通しての感想だが、コント師にとって30分は長く、劇団にとって30分は短い尺なので、コント師の方が押されているように思えた。前回のテアトロコントでも思ったが、爪痕を残すのは劇団側に思える。コント師にとって普段やりなれていない30分はアップアップであると思う。劇団の方が余裕を感じる。そして客層も演劇側の方が多く、ちょっとコント師に不利な状況かと思う。またこれは私の感覚であるが、コント師は誰にも受け入れられるような笑えるもの、それこそガン太氏の「いやらしく笑いに擦り寄せたものをコント」と言うように、笑える事を目的としたものを作っており、そしてそれは見た瞬間にちゃんと理解出来るものである。だが演劇はそこを超えて理解出来なくても成り立つと思う。今回で言うと、東葛スポーツは初見じゃ何が何だか分からなかったが、後に調べる内に毒っ気たっぷりな事や、玉田企画のあの感覚を笑いにする事は理解出来る者、出来ない者に分けられるであろう。どうしても人を選ぶ時点で演劇の方が、勝ち負けの話をしたい訳ではないが、どこか文化的水準は上のように思える。
 この試みは恐らく第2、第3のシティボーイズを生むことにあると思う。シティボーイズは元々演劇に飽き飽きしてコント側に移っていった経緯があるが、ここでのコント師はずっとコント師で演劇に触れている場面はそんなに無いと思う。このコント師側の演劇へのアプローチみたいなものを今後は考えるべきかなと個人的に思う公演となった。(倉岡慎吾)

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