渋谷コントセンター

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2019年3月29日(金)~3月30日(土)

テアトロコント vol.34 渋谷コントセンター月例公演(2019.3)

主催公演

公演詳細

テアトロコントvol.34(3/30)の演目
【や団】男が街でゾンビに遭遇して襲われそうになるが、意外な弱点を発見する『ゾンビ』、ゲーム好きなオタクが因縁をつけてきたチンピラとテレビゲームさながらにストリートファイトを交える『ゲーマー』、離ればなれだった親子が弁護士の協力で劇的な再会を果たすも同姓同名の別人の疑いがでてくる『父との再会』、街角でケンカが起きるが実はフラッシュモブ的なプロポーズの前ふりだったという『街の喧嘩』、結婚を控えたカップルがウェディングプランナーに会いに行くが、プランナーの男が花嫁の元彼だったことが判明する『ウェディングプランナー』の5本。体全体を使った躍動的なパフォーマンスが見た目に楽しい。いずれか1人がつっこみ的な立場で他の2人のやりとりを実況していくパターンよりも、『ウェディングプランナー』の現在の彼氏のように、当事者として状況にがっちり噛み合いながら他の2人に直接反応を返していくパターンのほうが、対話が断然密になり、3人組特有のうねりというかグルーヴ感のようなものが出て面白い。花嫁が切実な表情で言う「あなたはすべての元カレの影響を受けたベストアルバムなのよ」という、筋が通っていそうでいまいちよくわからないせりふがよかった。
【オルガナイザーDX】『チャーハン』『学業』『夜回り先生』『帝王と不潔兄弟』の4本。3分の1くらいはせりふが聞きとれず、聞きとれた部分も半分以上は何を言わんとしているのかよくわからなかったけれども、唐突に放り込まれる脈絡のない単語(もくぞの心?、たきこみダウンタウン?)や、言葉が渋滞を起こしているかのようなせりふ回しそれ自体にクセになるような魅力があって引き込まれた。当日のチラシには奇をてらわない簡潔な紹介文が書かれていたので、舞台での我が道をいくようなスタイルは作品(作戦)のうちなのだろうと理解した。四柳光崇さんは、『夜回り先生』の女装のときに声の表情が俄然生き生きとしていた印象を受けた。
【劇団「地蔵中毒」】『科学』は、〝科学〟というキーワードでは共通しているけれども、前後の脈絡はあまりない小ネタが刹那的に投入されていく。何人いるんだというくらい、舞台上に次々と人が増えていくところがビジュアル的に面白かった。『which?』は、インターミッション的なパフォーマンス。文字の光り具合が少し弱かった気がする。『テレビ』は、テレビ番組を撮影する直前に出演者にトラブルが発生し、その対応に右往左往するスタッフの姿を描く。最初の演目と同様に単発的なネタを連射していくタイプのコントだが、『科学』よりもややストーリー性があったので見やすかった。タイトルが「テレビ」なので仕方がないかもしれないが、せっかくコツコツと笑いを積み上げていったのに、最後のオチが使い古された芸能人ネタだったところがもったいない気がした。
【わらふぢなるお】『コールセンター』『コンビニ』『歌のお兄さん』『量販店』『アイスクリーム屋さん』の5本。日常でおなじみのシチュエーションを題材にしながら話があらぬ方向に展開していくという、今のお笑いで一番主流のタイプのコントだと思った。いずれもせりふに無駄がなくテンポもはやくて楽しかったが、対話の面白さでは『コンビニ』が群を抜いていたように思う。質問に質問で返すあのイライラさせられる態度に「空質問」という独自のワードを当てはめていたところが自分の中ではポイントが高かった。『量販店』でも「(店内アナウンスを)誰が録音したのか?」という店長の問いに「声を入れた人ですか? スイッチを押した人ですか?」と部下が返すところがあったが、こちらでは「分担した感じを出すな」と言下に退けていて、その問答無用な感じもよかった。わらふぢなるおの御二人は年齢的に金八先生の全盛期(1980年代初期)を体験した世代ではないと思うのだが、『アイスクリーム屋さん』で武田鉄矢(金八先生)の物まねをやっていたので少し意外だった。昨年10月の公演(テアトロコントvol.31)で、空気階段が田原俊彦の物まねをネタに取り入れていて、そのときも似たようなことを感じたが、なぜいま、よりによって武田鉄矢(あるいはトシちゃん)なのだろう? あと、『歌のお兄さん』のラストで、歌のお兄さんのショーが実はヒーローショーだったと判明すると、お父さんがあわてて子どもを連れ帰ろうとするのだが、あわてる理由がよくわからなかった。(注:せりふはうろ覚えです)。(大熊)


コント師三組、演劇人一組というイレギュラー構成が新鮮。
《1》【や団】<コント師>三人組/★★★☆☆/「今回お手伝いさせて頂きますウェディングプランナーの伊藤です…あれ?」新郎「知り合い?」伊藤「自分…元カレっす。…キレイに…なったな。素敵な式にしましょうね。(新婦に)なぁ?」と元彼感溢れ出るウェディングプランナーの打ち合わせ。新郎の好きな曲、手料理、服装、等あらゆる趣味が、かつての全元カレの趣味をあわせたベストアルバムだったことに気づかされる『ウエディングプランナー』他計5作品。恋愛を積み重ねるたび、知らず知らず前の人をバトンを受け取っていた可笑しみが短いやりとりで深まっていく過程が楽しい。他作品含め、ミスチル、アルフィー、スト2、サスケ、プロレス等、小ネタが昭和感満載なのを隠さないのが、逆に堂々としてたくましい。
《2》【オルガナイザーGX】<コント師>二人組+ゲスト/★★☆☆☆/
店主「ブルーベリー足りなくて、眼が見えねー!」新聞が読めず困っている中華屋店主に、コンサル「ベリー足らずだと、目がブルーになりますよねー」と、ライバル中華屋の経営コンサルが店の買収をもちかける。店主「オレの木造の心に火がつきました。ウチのチャーシューを食ってみろ!」と炊き込みご飯を出す『チャーハン』他計4作品。二度目の拝見だが、張らない声とテンションが生み出すヌメーっとした空気感。研ぎすまされた言語感覚と会話密度が織りなす独自の世界観になかなか脳が追いつけない。面白いかどうかというよりも、センスそのものに混乱し、やがて感心する30分。
《3》【劇団「地蔵中毒」】<演劇人>/★☆☆☆☆/孫悟空「東京理科大学に入学のみんな!入学おめでとう!東京理科大学の孫悟空とはオイラのことさ!」と老人の腕を粉々にするサイエンスマジックを披露する大学生。そこに秋山仁兄弟が現れ、だんだん文学部になっていく妹の苦しみを忘れるため、はとバスツアーに出る『科学』他計三作品。おそらく三度目の拝見。作品の内容は安定した荒唐無稽さとマニアックなセリフ回しを楽しむ時間。アフタートークでの主宰の方が29歳という事実が、作品以上に一番の衝撃で、一体どんな人生を送ってあそこまでの貫禄を手にしたのかが気になる。次回出演時、自叙伝の回があったら嬉しい。
《4》【わらふぢなるお】<コント師>二人組/★★★★☆/客「昨日光回線の工事をしてもらったんですけど、ネットがつな…」オペ「お客さまー?」とオペレーターが聞こえないフリを繰り返す『コールセンター』他計5作品。店長の教育にずっと質問で返す新米バイトに苛立つ『コンビニ』含め、前回出演時と同ネタも多かったが、小気味よいテンポと疾走感のおかげで、色褪せず飽きさせない。構造がシンプルな分、ツッコミの声が太くスパッとはいってくるだけで、安心して笑える。
【総評】コント師三組、演劇人一組というイレギュラー編成のおかげで、普段の二組ずつの編成が、いかに優れたバランスか気付かされ、テアトロコントという企画の絶妙さに感心した。(モリタユウイチ)


ナンセンスとファンタジーと
先鋒・や団『ゾンビ』ゾンビが出現したけど全然噛まないタイプ。逆に噛むタイプの人間。小競り合いから懐くゾンビ。ゴールデンレトリバーみたいなゾンビ。だから最終的には「よーしよしよし!よーしよしよし!」『ゲーマー』ストリートでストリートファイターな喧嘩になる若者たち。野次馬も完備。かつて御大ジャイアント馬場は言った「デカイことはいいことだ。」最後は単純に体がデカイやつが勝つ!『父との再会』父の前に現れた息子は似ても似つかない別人のタカシ。それでも息子は号泣。姓は佐藤、名はタカシとヒロシの間違いで平凡さワンツーフィニッシュ達成。でも息子はやっぱり号泣。2人は同じ町の1丁目と4丁目に住んでたんだってさ。『街の喧嘩』チンピラとサラリーマンの喧嘩をしばらく眺めているとなんだか八百長っぽい喧嘩。全てが段取りチックでロープワークもありの、あくまでもスイングを目指した喧嘩だ。ここで重度のプロレスファンの私は本間キッド氏がWARteeを着ている事に気付いてしまい気を取られているうちにミスチルで大団円を迎えていた。『ウェディングプランナー』ウェディングプランナーは嫁になろうとしている人の元カレ!男の人生は、音楽・料理・ファッション全てのジャンルにおいて彼女の影響、その奥でそびえ立つ元カレの影響下に置かれていたのだった。3人で演る事の難しさも感じたが端々に昭和の匂いがするコント達だった。まさにこれはレッスル&ロマンスだ!
オルガナイザーGXa.k.aマリファナシティーが放った4本のコント共にナンセンス・ノン・ストップの作品群。ナンセンスの世界で論理の法則を無視し縦横無尽に駆け巡った。一方で時には接近するが似て非なるものにファンタジーがある。私は今回の劇団「地蔵中毒」にそれを感じた。その世界には魔法がかかっていて、そこには統一性が存在する。『科学』で描かれた「山火事が起きても80年代ディスコがかかると踊っちゃう!」踊ってる場合じゃない状況。『テレビ』では〝松崎しげるの顔は世界で何が起こっても黒い説〟立証の為に核のボタンが押される。登場人物達はいずれもこの魔法によって破滅へと導かれて行ったのではないだろうか。
トリはわらふぢなるお。タメ口で凄いビートでキーボードを叩く『コールセンター』の人。『コンビニ』の新人バイト ザ・クエスチョンマンの怒涛のから質問。過剰な声出しを強要する上からくる『歌のお兄さん』。なんかヤッテそうな、酒以外のなんかヤッテそうなお兄さん。と思ったらお兄さんは実は怪人役の仕事熱心な方でした。『量販店』でコンニャクにゃくにゃくダイエットの宣伝アナウンス録音。バイトの子の変なイントネーションにオバケもつられるオカルト展開に。海援隊『人として』の歌に乗せて作ってくれる『アイスクリーム屋さん』等、様々な人々が集う人間百貨でありました。
今回は久々に暗転が長く感じた。コント勢が多かった事や、アフタートークでも触れられていた様に衣裳替えをリアルタイムのストロングスタイルで行なった等、理由はいろいろあるのだろうけれどやはり暗闇であの長さ幕間曲を聴くのは少々辛く感じた。構成のもう一踏ん張りに期待したいと思った。(三好謙人)


デートスポットに困ったら。
付き合って間もないカップルがデートに行くとしたら、どこに行きます?映画?でも、作品がイマイチだったら気まずいですよね。公園?でも、話題に詰まったら間が持ちませんよね。そんなアナタにオススメなのがパワースポット。この先、始まる二人のドラマを後押ししてくれそうな期待感に満ちていて、良い選択だと思いませんか?
そんなパワースポットでのデートをコントにしたのが、個性際立つ男女コンビ、スーパーニュウニュウ。パワースポットとされる幸運の岩をベタベタさわり、ニコニコしていると、ふるやいなやさん演じる彼女の携帯に連絡が。宝くじで1000万円が当たったと。二人は大興奮。パワースポットの効果だと。すると、大将さん演じる彼氏にも電話が。爺ちゃん、死んだ。一転、気まずい空気に。その直後、彼女にまた電話。懸賞で世界一周旅行が当たったと。またまた二人で大興奮。その直後、彼氏に電話。友達、死んだ。コントの教科書のようなお約束の展開。緩急の振り幅が大きい、コント師特有の大将さんの演技も手伝い、もう、笑うしかありません。そして、彼氏を慰め、帰ろうとすると、彼女の肩が通行人にぶつかる。謝って、ふと顔を見上げると、何と何とジョニー・デップ!大ファンの彼女は大興奮。そして、どういう訳か「パイレーツ・オブ・カリビアン」のDVDボックスを貰ってしまう。この度を越えた展開には、彼氏も流石に突っ込まずにはいられません。「本人かよ!何でDVDボックス持ち歩いてんだよ!」ごもっとも、ごもっとも。その直後、彼氏も同様に通行人とぶつかる。すると、相手が倒れ、死んでしまう。もう、ナンセンスの極み。ここまでやれば、ご立派です。一見、無思想に思えるこのコント。ところが、それは大間違い。男女は常にすれ違うという真実も内包されているのです。
リアリティのある演技と緻密な展開による笑い。これは勿論、評価すべきです。でも、それと真逆にある、大声とオーバーアクション、スラップスティックでギャグ漫画的な笑いも同様に評価すべきではないでしょうか?ともすれば、後者は軽視されがちな傾向もありますが、これには断固、異を唱えたいと思います。
リアルとアンリアル、ベタとシュール、繊細さと雑さ。そんな多様な笑いに触れられるテアトロコントを観た後は、好き嫌いも含め、様々な意見と感想が飛び交い、話が尽きることはありません。お分かりですね。テアトロコントはデートスポットとしても最適なのです。(市川幸宏)

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