渋谷コントセンター

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2020年1月24日(金)~1月25日(土)

テアトロコント vol.42 渋谷コントセンター月例公演(2020.1)

主催公演

公演詳細

テアトロコントvol.42(1/25)の演目
【Aマッソ】『ヤンキー』は、他人の心の声が聞こえる特殊能力を持つ女の子が、学校帰りに同級生の面倒くさいヤンキーに絡まれる話。あどけない外見とは裏腹に、人の心がわかるゆえに妙に達観した物の見方をする女の子と、言動に一切の裏表がない愛すべきがらっぱちとのやりとりは、漫画「じゃりン子チエ」の世界を彷彿とさせる。村上愛演じるヤンキーの外見と動き(小柄でイキっている)は、関東で長く暮らしている自分の目には吉本新喜劇ぽく映った。大阪(関西)の笑いの文化が若い世代に着実に受け継がれているさまを目の当たりにした気分だった。『病院』は、〝瀕死の重傷を負った病人は長い眠りから覚めたときどんな第一声を発するか?〟で、友人や家族らが当の病人をほっぽりだして賭けをするといった話。両演目とも結構長かった(10分前後?)気がするのだが、冗漫な印象はなくあっという間だった。2人ともとにかくよく舌が回る。そのエネルギーが時間を満たしていたように感じる。特に『病院』での加納愛子はひたすらしゃべっていて、個々のエピソードもバラエティに富んで面白いのだが、延々としゃべり続けていることそれ自体に途中でちょっと圧倒させられた。
【川面企画】『田川の一年』は、演劇の公演をドタキャンしたために謹慎させられていたという、田川啓介という実在の演出家が、謹慎中の自らの生活を自作自演で描いた作品。アルバイト先の先輩とのやりとりは滑稽で楽しいが、物語の主眼は、こうしたやりとりを描く過程で田川の人間性が徐々に浮き彫りになっていくところに置かれている気がした。先輩の機嫌を損ねたとき、頭を下げればそれで済むじゃん、簡単なことじゃん、などと知人に言われるが、田川は謝らない。このとき田川が知人の言葉に対して抱いた違和感は、演劇の世界で生きる彼にとっては必須の嗅覚なのだろうと思った。だから、もし「簡単に」謝ったりしたら(そんなことはしないだろうが)、演出家としての彼はそこで消えてしまうのだろう。実際に向き合ったら自分にはあのお姉さんや知人のような優しい態度は取れない(抱えきれない)だろうなあと思いつつ、それでもこの人物の成り行きから目が離せないのは、彼が直面しているのが、人生のままならなさという生きる上での根源的な問いであるからにほかならない気がした。語り口の軽妙さに救われる。
【東葛スポーツ】『往復書簡』は、スクリーンにメッセージアプリの画面が映し出され、そこで交わされるやりとりを書き手である男女が読みあげることで話が展開していく。女の方は、最初はどことなく迷惑メールっぽい、機械っぽい雰囲気を出していたが、徐々に明確な意図をもって男に接触してきたことが明らかになる。前半はほぼアプリ画面の映像のみで進行するが、素性の分からない相手とのやりとりそれ自体にサスペンス性があり、緊迫感のある音楽も流れ出すので、飽きずにみることができた。対話は徐々に現在進行形になって、ヒッチコックの『知りすぎていた男』のラストシーンになぞらえながら、最後2人はテアトロコントの客席で落ち合うことになる。全体に、スピード感のある映像と音楽の編集がとてもよかった。公演日の数日前から話題になり始めた「コロナウィルス」という単語がすでに取り入れられているなど、内容に時事性、即時性があるところが自分には一番魅力だった。冒頭、小泉進次郎の記者会見の映像を流していたが、特に何も付け足していないのにどこか滑稽な印象を受けた。この人物が普段から醸し出している独特の雰囲気もあるだろうが、それとはまた別のものである。みせる文脈を変えるだけで笑いは起きるということの1つの好例というか可能性をみたように思った。
【ゾフィー】『変わりゆく景色の中で』は、せりふの世界と目にみえる動きの世界とが解離していて、そのずれがおかしさを生む。ちょうどこのレポートを書いているときに、机の天板に覚醒剤を塗りこむというニュース(『覚醒剤含む素材でできたテーブル 密輸容疑で組員ら逮捕』朝日新聞デジタル1月27日付)を目にして、現実とのシンクロ度合いに「おおっ」となった。『僕は君をずっと待ってる』は、飛び降りをしようとしている男のもとへ葬儀社の人が駆けつけ、重要なアドバイスをするといった話。葬式というイベントをありきたりではないしかし大いにうなずける視点から語る上田航平の熱血ぶりがおかしい。『夢を夢で終わらせはしない』は前半、サイトウナオキ演じる男が身ぶりだけで数字を示す場面があり、最初は単純に表情のおかしさに笑ったのだが、後半の展開がわかってからその場面を思いだすと、声を出していなかったがゆえに唯一自粛されなかった発言シーンのように思えてきて、その後しばらく、調子にのったようなサイトウの表情とともに何度も笑いがこみ上げてきた。秀逸な仕掛けだと思う。(大熊)

拝啓 寒冷の候、貴社ますますご繁栄のことと心からお喜び申し上げます。
半年くらい前に「ゆうめい」について書いた時に役者さんが台詞トチってーみたいに書いたことを今でも反省してて(マジで話の発展上超ポジティブな効果があったんですがでも実際言われたら嫌だろうなと)安全な位置から書き直しし放題の中で書くことを今回捨てる為に今から【 30分間 】(テアトロコントの各組上演時間)で批評モニターとして神経を集中してタイムアタックでレビューを書き上げたいと思います!本気です!いきますよそれでは始めます!【 今回このタイムアタック形式は事前に考えていたんですが偶然東葛スポーツの『往復書簡』が前半に小泉&滝クリの子どもの命名までの時間カウントダウンみたいなネタだったので俄然この形式でやる意味が付加されてラッキーって思いましたでもそもそも考えたら「ゆうめい」の人はというか演劇は「練習めっちゃしてのちの本番の30分」だからこの「ぶっつけで書く30分」は全然方向性ベクトル向き変に違うかもと思いつつ(「即興」?みたいなものなので)でもこれだって事前の思惑を今考えたみたいに並べてズラズラ書いてるので脳内リハみたいなのは済み済みなのでいけるはず!と踏みました今回の東葛のタイトル見てタイトル見たことある気がすると薄々思いつつ始まったら前半違うのであれやっぱ別作品なのかなと思ったら結局途中から前に見た作品になっていきました(部分的に違います「10笑の内容」など)今当パンの東葛のを読んだらはっきり「今回上演する演目は、vol.22に出演した【 10分経過 】よりによって引用中ににはマズイタイミング!ちゃんとルールに則って何か読む時間もタイマー進みます続きです「時にやった『往復書簡』という」とガッツリ書いてある事前予告があったようですそしたら確か自分その時にも批評モニターで参加してたのでレビューをフォルダから探して見ます22ですよね(がー!パソコン重くて全然ワード開かないです急遽テキストエディットで)タイトル「注)文中の「東葛スポーツ」は全て「トレンディドラマ」です。」でした見つかりました渋谷コントセンターの過去のレビューアーカイブのにも見つかりましたこれです(http://eurolive.jp/conte/review/?id=000009)ただこれ東葛がテアトロコント上演中に内容即したメタ演劇みたいなのだったので(今回も!)東葛憧れでその時に当パンを受け取った人に即した内容になってるのでもう1回使えなそうですねあと確か「公演詳細」と照合すると判明するんですがめちゃくちゃ日を間違えてるので本来【 20分経過 】あと10分!「29日」と「30日」としなきゃいけない繊細な設定を「27日」と「28日」にしちゃってなんのこっちゃ分からないゲームブックになってますなのでそれに抵触しない内容の「【親愛なる会場以外のあなたへ】あなたは今、この文章を読んでいる。帰路の車中で、歩きながら、家の居間で、ベッドにねっ転がりながら、あとそもそもテアトロコントvol.23見てない人も含まれるかもしれない。」(すいません時間削減のためにコピペしました)「ネタバレとか少し気にしちゃうので当日パンフレットは終わった後読むタイプなんですが」(さすがにズルかなと思い読みながら手入力してます)「たまに「開演前にお読み頂きたい」的な内容のとかいやいやいやもう終わっちゃってるよみたいなパターンの文章(コレが正にです)」(内容書き換えてみました)そもそもだって今回再演なわけで再演って演劇でもお笑いでも若干同じネタOKでだと批評も再演?大丈夫なんじゃないかとか(結構同じ内容ガンガン書いてる人いたりしますよね悪い意味じゃなく!再演やリ・クリエーションの雰囲気を持たすために上で若干の書き換えしてみました批評はなんなんでしょうか)その点東葛は結構【 30分経過 】再演と言いながらガッツリ最新時事ネタ盛り込みで改めて作ってました他の批評モニターの方の当時のレビュー読んだら前回は小泉&滝クリのところは「Jアラート」だったそうです情報を残してくれていたので確認できましたありがたいですしれっと時間オーバーしてますがたしか昔玉田企画も絶対オーバーしてた笑ので許して下さいそれでは 】(Total Time 35:43)(小高大幸)

人がカンタンに死んではいけない理由
あなたは交通事故に遭い、生死の淵を彷徨っています。意識をなくし、どれくらいの時が経ったのか、当人は知る由もありません。そんな最中、突然、目を覚まします。最初にどんな言葉を発するでしょう?映画やドラマにありがちなのが「ここどこ?」。多分、実際、そうなんでしょうね。まず、自分が置かれている状況を知りたい。でも、そばにいる家族や友人がその問いにすぐ答えることはないでしょう。意識が戻ったことへの喜びの方が先走ってしまうから。では、これをAマッソがコントにすると、どうでしょう?ベッドに横たわる村上さんが目を覚まします。「ここどこ?」。それに対し、友人役の加納さんは何と言うか?さぁ、一緒に考えましょう。Aマッソのことだから、相当な変化球が来ることは想像できますよね。毒のある展開も期待できます。分かりますか?正解は…「そっちかー」。村上さんにしてみたら「えっ、そっちかって何?」ってなりますが…。勘のいい方ならお分かりでしょう。そう、加納さんは、村上さんが意識を取り戻した時、最初に何と言うか、賭けをしていたのです。友人のみならず、家族も一緒に。「ここどこ?」は定番なので、なんでそれにしなかったのと思う方も多いでしょうが、実は加納さん、医者にリサーチしたところ、最初に「寒っ」や「痛っ」と発する人も多いと聞き、まんまとのってしまったのです。それが故の「そっちかー」。そんな理由を聞かされたとしても、村上さんにしたら「あぁ、なるほどな」とはなりません。当然です。自分は瀕死の状態だったのに、賭けの対象にされていたのですから。さらに、あろうことか「起きひん」に賭けていた友人も。「なんでやねん」とツッコミが出るのが自然です。
一方、ビルの屋上に手紙を置き、靴を揃えていたサイトウナオキさん。そこにスーツ姿の上田航平さんが駆け付けて話が転がるゾフィーのコント。自分が死んでも誰も悲しまないと言うサイトウさんに、でも、葬儀には何人か来るだろうと、弔問客の数をしつこく尋ねる上田さん。誰も来ないと言われると激昂します。「だったら死ぬな」「葬儀は数」だと。それもその筈、彼は葬儀屋。弔問客が多ければ多いほど準備するものも多くなり、儲かります。だから今すぐ死ぬのではなく、死んだら悲しんでくれる友達をたくさん作って、それから死んでくれと願い出ます。
そう、この世には、人の生き死にを金儲けの材料としか見ない人もいるのです。そんな人たちを喜ばせたいですか?もしも、そうでなかったら…「生きろ!」。この2組のコントには、人命の尊さという強いメッセージも内包されているのです。(市川幸宏)

あつまれ厄介さん!
オルガナイザーGX『学園』今回のオルガナイザーは長尺1本勝負。アニメーション学園でのオリエンテーションにやって来た四柳さん。4日で卒業するカリキュラム。入学者は四柳さん1人。1日目腹式呼吸、腹筋がない四柳さんだったがオナラを嗅いだ際の「クサッ!」で腹式呼吸での声出しを会得2日目感情解放、笑うのが苦手な四柳さん学生時代の楽しかった思い出がない。それを何故か先生に「ナメてるんですか?」「感情ありますか?」と詰められる。3日目袋をかぶってのアフレコ、先生が魔王、四柳さんが焼き立て勇者コペペに扮しマーガリン姫を救出に。4日目は総決算、オーディションのシュミレーションみたいなやつでマーガリン姫とのラブシーン。合否は持ち帰られ突き付けられたのは1年間の授業料を4日間に凝縮した600万円の請求であった。今回は長尺によりストーリー展開ができ観やすかった印象だが分類分けや批評をすり抜けるのが魅力のコンビとしては少し物足りなかったか。
川面企画『田川の1年』まずは田川さんの自己紹介。自主公演でヘタを打ち1年間謹慎、借金100万円を背負い就職活動する感じが描かれる。田川さんの姉が一向に働く気配がない田川さんに業を煮やし強引にパチンコ屋エコーのバイト面接をセットしてしまう。渋々面接に向かう田川さん。そこに現れた明らかに怖いドレッドの女性店長。田川さんも田川さんで履歴書に職歴を書かない欠落ぶり。社会人失格だの散々言われるが何故か受かる。田川さんはパチンコ屋で働き始めるが景品カウンターのバッグが無くなり無能呼ばわりされるが犯人はまさかの店長。注意喚起目的だと言う。何の説明もされないままメダル計測機の清掃を命じられダメ出しされる理不尽ぶり。その事を日報に書いちゃう田川さんも田川さん。ある日、店長、田川さん、バイトの金井さん3人での飲み会でも、店長のホントに居るか居ないかも分からない半グレ彼氏の話を延々聞かされ、学歴コンプレックスからのマウントにウンザリ。しかし金井さんの「謝っちゃえばいいんですよ。」というアドバイスは聞き入れない田川さん。そういう自我があります。そんなある日今回のテアトロコント 演出オファーを受けるが姉には反対され「演劇以外の趣味持てば?」と言われる始末。「借金はだいぶ返して残り90万円。今は趣味で時々演劇を演っております。」という田川さんの借金完済ロードはまだまだ果てしなく続く。
東葛スポーツ『往復書簡』ボーンヘッド感のある進次郎の出産報告の映像からメール画面へ。進次郎の生まれた息子の名前募集というメールが男の元に送信されてくる。そのメールの相手は政府の人間らしきフリをし、男の持田健一という名前も知っている。「どういう事ですか?スパムメールの類いですか?通報しますよ!あなた誰ですか?」そのメールの相手は自分が田中史子だと名乗り、あなたの妻は密会をしていると告げる。その相手は私の夫だと言う。私の夫は笑い好きであり「あなたの妻は演劇好きですね?」と確信を持っている様子だ。確かに妻は小劇場に足を運ぶ程の演劇好きである。そんな2人が密会する場所は笑いと演劇が交差する地点、そう今夜のユーロライブで行われるテアトロコントであると田中史子は言う。そしてアメ横で入手したAK47カラシニコフで「私は2人を殺す。」とも。ここからアルフレッド・ヒッチコックの『知りすぎていた男』が映し出され劇中の演奏会のシーンと今、私達が目撃しているテアトロコントが重なっていく。そこから『今夜はブギー・バック』への怒涛のクライマックスへ!メールのシーンで科白とオペが合わない箇所が多少あったがやはりオリジナル性の高い構成力を持つ素晴らしい作品だった。
ザ・ギース『合コン』男性の参加者を尾関氏、女性の参加者を高佐氏が全て演じる凄まじさ。最終的には別の人格も現れカオスに陥るが上流変態男がお持ち帰りされた所でハッピーエンドに。『喫茶ENDROLL』閉店までいたお客さんが帰ろうとすると突然スクリーンが出現。そこに流れてくるメニュー、原価、バイトスタッフ、シフト、閉店後に店長のトークショーあり。スクリーンに映るワードに沿って科白を言っていくので、どうしても置きにいく感じになっていた。言葉選びも難しく感じるネタだった。『贈る調べ』夢を追いかけ新聞販売を辞めるベテランバイト。そんな先輩を慕う後輩は400万円のハープ演奏で送り出す。ベテランがお返しにハープの音色に乗せて完成させたのは小田和正の『ラブストーリーは突然に』のジャケットのノケ反りを紙切りで表現した作品。寄席に懸ける青春だ!コンビの器用さが目立つ作品達だがその器用さを笑いで超えていく難しさも感じました。
今回のテアトロコントにはいつにも増して厄介なキャラクターが大集合。2020年は円山町が厄介の巣窟になっていく事に期待は膨らむ一方だ。(イトモロ)

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