渋谷コントセンター

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2016年9月23日(金)~9月24日(土)

テアトロコント vol.11 渋谷コントセンター月例公演(2016.9)

主催公演

公演詳細

コント3組・演劇1組のパワーバランスによって顕現したもの
【1】Aマッソ『制裁』他5作品。「相槌を間違う奴」のせいでシュルレアリスム的質疑応答から始まるが、アイロンの制裁によって徐々に通常の相槌に近づいていき、追い討ちのように少年からネタへの批判に似たコメントが入ることで更に矯正されていく。「ユーモアはあくまでセンスの世界にとどまるが、ナンセンスはむしろシュルレアリストのいう「驚異」の領域に属している(扇田昭彦)」。ユーモアとナンセンスの間のバランス感への意識が、新聞長期連載4コマ漫画家・植田まさし・いしいひさいちの採用に現れている。
【2】さらば青春の光『バイト』他2作品。 AV男優が自身を「AV俳優」と言う時に発生する独特の違和感は「俳優は考えるコマである(平田オリザ)」の言葉にある「考える」という救いの部分すら認めない徹底した「コマ」と見做されている事に由来する。ワフタンゴフが俳優に求める「すなおさ」「自発性」が全く必要とされていない業界の倫理をえぐっている。グミになるブドウを丹精込めて育てる事が「徒労」と認識されることで起こる笑いも同型と感じた。キングオブコント2回戦敗退は絶対に信じられない。
【3】玉田企画『変心ii』。「演技しているじぶんがつくりあげるフィクション空間の雰囲気を、絶えず解体させてしまうもうひとりの自分を、二重に作りあげている自然芸(吉本隆明)」。役者に「一貫した方が」と言う演出家本人が一番優柔不断で一貫性が無い「演出ができない演出」をしている。「見といてみ」や「俺は書き直さない」や「チケット売って下さい」など言いそうな台詞の再現度が高くイライラさせ「大抵は一貫性の欠如によって起こる(円城塔)」という「炎上」のドラマさえ起こさない生煮えさだった。
【4】ラブレターズ『ネタ会議』他4作品。「西アフリカに、祭りや婚礼や葬儀の場に現れ、人の名を褒め称え、時にはけなし、即興で物語を作り、それをなりわいとして旅を続けている「ジェリ」という声の集団がある」という伝承を思い出した。積年、ジェリに欠けていた身体性が、ここ日本でパラパラじみたダンスとして一度に表出したかのような華やかな葬儀だった。「エンタメというオブラート(ドミニク・チェン)」にこそ包んでいるものの各ネタでそれぞれ拭い切れないマッドさが見え隠れしていて結果国を超えた。
【総評】「客に背中向けて笑いをとるのは最も欲しがり」という、さらば青春の光から玉田企画への指摘は、演劇における平田オリザの発明に対するコントからのクリティカルな意見だと思った。それぞれの常識をつつき合うという事にもテアトロコントの意義を感じた。(小高大幸)

バラエティーに富んだバランスの良いショーケース
1番目はAマッソ。『Aマッソみたいな女芸人が一番嫌い』が最も印象を残した。明らかに男性向けの、味が濃そうなラーメン屋の店員が若い女性であることに腹をたて、ラーメンを食べずに帰ろうとする客。「Aマッソといっしょや」と客は店員を挑発する。AマッソのコントをバカにしたコントをAマッソがやっているというメタな構造。女のコントは所詮、男のコントの真似事、という辛辣な内容だが、とても笑えた。実際、テアトロコントはすべての出演者が男性ということも多く、そこにはじめて一石が投じられた。間に挟まる映像コントも総じてインパクトがあり、これだけの上映会も観たいぐらいだ。
2番目はさらば青春の光。『バイト』ではやる気のないバイトが財布を取りに来た客に意地でも財布を渡さない。『社会科見学』では汗水垂らして育てられたブドウが例外なくグミの果汁になることに、子供は衝撃を受ける。『AV』では異常に演技にこだわるAV男優がいるせいで、ちっとも撮影が進まない。どのコントも、「これまで疑ったことのないこと」が揺さぶられはじめてから、俄然面白くなる。
3番目は玉田企画。『変心ii』という本番近い稽古場で、演出家の指示により作品が更にダメになっていくコントは、確かに笑ったけれども、以前にテアトロコントで披露した『変心i』にディテールが似かよりすぎていて、どちらも観たお客さんには不満を持った方もいたのではないだろうか。シリーズ化がアウトだとは思わないけれど、『変心iii』がもしあるのなら、笑いだけでなく新鮮な驚きも欲しい。
4番目はラブレターズ。不本意かもしれないが、塚本さんの骨折による制限についてコント中に謝罪するくだりがいちばんウケた。先日のキングオブコント2016でラブレターズが出演した際も、「あそこ、折れてるんだなぁ」と理解できるコントで内容とは関係のない笑いが込み上げてきた。偶然を味方につけることに成功した好例だった。
今回はいい意味で4組バラバラの作風で、バラエティーに富んだバランスの良いショーケースになっていた。どのような感受性を持ち合わせていても、必ずどこかで笑えるポイントがあったはずだ。ただ欲を言えば、一度くらいは、「ホラーコント」とか「地に足のついていないふわふわなコント」とか、強烈なコンセプトで集められた4組のテアトロコントがあってもいいかもしれない。そのようなコンセプトであれば、アフタートークも含めて楽しみにして、足を運ぶことになるだろう。(綾門優季)

テアトロコント入門編
一番手のAマッソは大喜利的な会話のやり取りから展開が飛躍していくコントが特徴。お婆ちゃんから喧嘩腰に「相槌が独特な奴には制裁を下せ」と教わり実践する『制裁』、“植田まさし”と“いしいひさいち”の娘が邂逅し、それぞれの漫画の世界観を相手にぶつけて結果仲良くなる様を描いた『ミカ』は、なんじゃそりゃな設定とやり取りのオンパレードだが、そのギリギリの所で「分かる、分かる」という気持ちにさせてくれるのが非常に気持ち良い。また、『Aマッソみたいな女芸人が一番嫌い』ではタイトル通りの自己批評なのだが、設定が「女店主の営むラーメン屋は食う気がしない」という所から「男の真似事」を共通項とした見せ方をしていて非常に見やすく作られている。この伝わる、伝わらないの攻めたラインを突っつき、また会話の可笑しさだけでなく展開の捻じれも伝わった時の会場一体の爆笑が気持ち良いのがAマッソだと思う。 
 二番手はさらば青春の光。「ここのブドウは全部グミになります」で最初の最大瞬間の笑いが起きた『社会科見学』も、男優が俳優としてのポテンシャルを監督に見せようとするも「ただただセックスするだけで良い」とだけ返されてしまう『AV』も当然良作であるのだが、一番好きだったのは『バイト』というコント。特に説明は無く、会話の中で二人に“カラオケのアルバイト店員は客の忘れ物の財布を盗んでも良い”という共通認識がある事が分かり、「私はバイトですから」「バイトだもんなぁ」との会話を軸にした心理戦を見せつける台本がとても素晴らしかった。
 三番手は玉田企画。演出家が無茶苦茶に演劇の稽古を乱す、過去2回テアトロコントで上演されたもの改訂版である『変心ⅱ』。今回は新たに外国人キャストも入り、それ特有の台詞もあったりしたが、何が一番良かったかと言ったら玉田企画主宰・玉田真也のパワーアップした演出家役の“欲しがり感”であった。過去2回の上演よりも笑い待ちやタメが多く、より大げさに、より分かりやすく、その演出家から出される稽古の気まずさが伝わるものとなっていた。尺も40分と長くなったのもその影響であろう。この笑いを“欲しがる”事が、演劇がコントに歩み寄る一つのベクトルに感じた。玉田企画が具体的にお笑いに歩み寄ったのは、テアトロコントの功績に思う。
 四番手はラブレターズ。半暗転状態で舞台上生着替えをしながらコントを5本見せてくれるシステムはどうしても昔懐かしい『渋谷コントセンター』を想起する。それがほぼ満員のユーロライブで見られるのだから、お客さんがガラガラだった当時を考えるとグッと来てしまう。1本目の『ネタ会議』はどうしても玉田企画の圧倒的なメタと同系統だったため薄く感じたが、3本目の『ペット葬儀』にて「葬儀屋特製たべっ子どうぶつです」でそれを叩くオチで本公演2度目の瞬間最高の笑いが起きた。折角なのでラブレターズの怖いオチのコントが1本ぐらい見たかったなと思った。
 今回は全組順位を付け難い、玄人向けの部分と分かりやすい部分のバランスが取れた公演であった。テアトロコントに入門編をあえて設けるならこの公演がベストであろう。また、コントをオムニバス的に繋げて1本の形にする事がテアトロコントの1つの見せ方になっていく節があったが、今後はメタを取り入れる事も主流の一つに成り得そうな公演であった。(倉岡慎吾)

お笑い3組に玉田企画が挑む!
10回を越え、ある程度の立ち位置を確立しつつあるテアトロコント。11回目の開催となる今回は、お笑い枠が3組。演劇枠が1組。アフタートークでよく出ていた“演劇枠演者の方が有利なのでは?”問題の考慮した布陣だろう。
 さて、唯一の演劇枠から「青年団リンク 玉田企画」より『変身ⅱ』。同作品は、すでにテアトロコントで下ろしたコントのブラッシュアップ版。役者に白人女性が登場したり、玉田真也は相変わらず新しいことをするなあ……。これ、他がやったら真似したって言われちゃうじゃん。内容は、安定の面白さ。企画公演「弱い人たち」に参加するなど、渋谷コントセンターとは相性がいいのだろう。
 ラブレターズ。塚本は、交通事故から復帰したばかり。コルセットに気を払いつつ5本のコントを上演。無駄に頑張る葬儀屋の『ペット葬儀』、“イケメンの俺は本当の家族じゃない”とヘンテコな涙を流す『兄弟』など、ちょっとズレた感覚の作品は、やみつきになる。キングオブコントは決勝進出したものの、芳しくない結果だったが、箱で映えるそのネタは、ぜひとも生で体験していただきたいところだ。(早川さとし)

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